部品購買計画
日本の自動車メーカーにおける購買プロセスは、大きく2段階に分けることができる。サプライヤーに対する部品発注手続きの最初のステップは、月間生産計画に基づいて行なわれる。毎月自動車メーカー内部で向こう3ヶ月分の生産計画を立てる。その計画から導き出した必要部品の3ヵ月分の発注量を毎月サプライヤーに提示する。ただし、月間生産計画策定の段階では、製造予定の車種名以外の項目は正式には決まっていない。そこで自動車メーカーは、月間生産計画策定の段階では車種以外の最終仕様の注文内容を予測にもとついて決めている。過去の販売データ、今後の市場動向予測等により、各車種毎に異なる多様な最終仕様の注文を予想するのである。
こうして、各車種の最終仕様それぞれの生産に必要な部品の出現確率を導き出し、向こう3ヵ月分の部品の予想発注情報(部品内示|内示表)をサプライヤーに対して毎月20日前後にネットワークを通じて伝達する。例えば、N-1月20日過ぎに伝達される内示表の中には、N月分、N+1月分、N+2月分の発注情報がそれぞれ示してあり、直近のN月に関する発注については、納入日程表として日次の納入数量がほぼ確定している。このプロセスを毎月繰り返していくのである。なお、「内示」という表現が使用されていることからもわかるように、日々の納入数量が暫定しているとはいえ、この段階での発注はあくまでも事前予告という位置付けにある。その後、自動車メーカー内で基本生産計画を週毎に(あるいは旬毎ごとに)修正していく作業(つまり車種毎の仕様を修正する作業)を行うが、そのプロセスの中で内示表の伝達を再度行う。
部品サプライヤーへの内示伝達の頻度は自動車メーカー毎に異なり、例えば日産自動車では、確定発注日の16日前から毎日伝える。このようにして、N月分の納入量が示された納入内示表を各部品サプライヤーに伝えた後、N月の日々の納入数量および納入時間を指定するという作業に移る。この段階で、最終的な部品発注が行われる。この日次情報の伝達は、オンラインで行われることが多い。部品の納入方法は2通り存在する。1つは、ロット納入であり、1日数回数時間ごとに指定の時刻と場所に部品サプライヤーが納入する方法である。トヨタ自動車では、有名な「かんばん」を通じて行われる。もう1つは、シートやタイヤ、バンパー、最近ではインパネモジュールなどのサイズが大きく、完成車の工場で大きな在庫スペースを必要とし、車1つ1つの仕様に応じて種類が多岐にわたるような部品は、組立ボディの着工順序通りに納入される。ただし、ボディの最終組み立ての着工順序計画が正式に確定するのは、塗装工程を経て組立工程(各種部品をボディに組み付ける艤装ライン)に入る直前である。この時点で、順序納入部品を生産するサプライヤーに車輌の納入順序をオンラインで送り、組み立ての順番通りにボディに合致する部品を納入してもらう。納入頻度は、どの自動車メーカーも約30分毎である。以上のように、自動車メーカーにおける購買計画は、生産計画に対応した月次レペルの発注内示と日々の生産に対応した日次レベルという2段階の計画が組み合わされている。[1]
出典
- ^ 受注生産システムの方向性 -日本の自動車メーカーの事例- 富野 貴弘