自動車排出ガス規制
自動車排出ガス規制は各国、地域毎に設定され、日本でも自動車排出ガス規制値として、その適用が義務付けられている。ただし、その規制値は検査時にのみ適用されるため、公道を走行するような実稼動状態の排出ガスを規制するものとはなっていない。オフサイクル規制として、検査モード以外で排出ガスを規制値を超えて排出することは禁止されているが、現在の検査方法では実走行時の排出ガス濃度を検査できないことが問題となっている。そのため、各国と協調して、世界統一の排出ガス規制値、及び実際の走行での計測であるPEMSの導入が計画されている。
2015年9月に発覚した、VW(フォルクスワーゲン)のディフィートデバイス制御は、本来、エンジンの保護等を目的とした、排出ガス規制装置の非稼動を、検査時か実走行時か判定するプログラムによって切り替えていたことが問題であり、ディフィートストラテジー自体に問題があるわけではない。同様の問題が、日本でも2011年にいすゞ(トラック)により発覚したが、前述のオフサイクル規制のきっかけになったと言われている。
2016年5月、日産自動車が韓国で発売している、キャッシュカイのディーゼルエンジンにおいて、吸気温度が35℃を超えると、EGRを停止する制御が、韓国当局から不正であると指摘された。ただし、全く同等の制御が欧州では合法であると認定されている。
2016年4月に発覚した三菱自動車による燃費計測不正では、シャシダイナモメータへ設定する走行抵抗値を道路運送車両法で定められた方法以外で計測し、10%程度の燃費改善を図ったものである。また、この件の発覚後、国土交通省が国内の自動車メーカー各社へ、順法の再確認を指示したところ、スズキ自動車においても、法定外の方法で燃費計測用の基礎データを取得していたことが発覚した。
このような、排出ガス規検査逃れ、燃費計測不正は、いずれもシャシダイナモメータ上で計測する、室内計測に問題の根本的な原因があり、世界的に実走行計測の流れが加速している。今後の排出ガス検査や燃費計測は、実走行状態かつ、世界標準の試験モードにおいて行われるようになると思われる。
自工会ホームページより
- さらなる自動車排出ガス浄化のために
わが国の排出ガス規制は世界で最も厳しい水準にあり、自動車メーカーは対応技術の研究開発に積極的に取り組んでいます。その効果もあって、大気中のNOxをはじめとする汚染物質の量は大都市部も含めて年々減少傾向にあります。また、環境大臣の諮問機関である中央環境審議会は2005年4月に「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第8次答申)」を答申し、2009年から導入された平成21年規制では、ガソリン・ディーゼルなどの燃料種別によらない、欧米と比較してもトップレベルの排出ガス規制値となっています。日本は排出ガス試験法の国際基準調和活動を推進しており、国連で決まった試験法が2010年に二輪車へ導入されました。今後、2016年にはディーゼル重量車へ、2018年にはガソリン乗用車等へ、国連で決まった試験法が導入されます。
- 大都市部を中心とした大気環境改善対策
大都市部を中心とした大気環境改善のため、国や大都市部の地方自治体では自動車に起因する問題について対策を進めています。国としてはNOx(窒素酸化物)とPM(粒子状物質)の削減のために自動車NOx・PM法に基づく車種規制を実施しており、また、大都市部の地方自治体ではPM削減を目的としたディーゼル車の運行規制を実施しています。こうした制度の実施に伴い、対象となる地域では使用できる車が制限されています。