モジュール化
90年代半ば以降、特に欧州の自動車メーカーが積極的に試みているのが、自動車生産のモジュール化(製造のモジュール化)である。これはアーキテクチャにおけるモジュール化(後述)とは異質の動きであり、混乱を招きやすい。自動車産業の生産現場で進められているモジュール化とは従来より大きい単位で部品をサブアッセンブリし、これを外部の部品メーカーに任せる(調達のモジュール化)、という方式を指している。例えばダイムラーMCCによる「スマート」の生産工場では、システムパートナーと呼ばれるサプライヤーがMCC組立工場を囲むように敷地内に隣接し、コクピット、フロントエンド、ドアなどのモジュールを組み立て、MCCの最終組立ラインに直接供給している。従来組立メーカーの領域とされてきた車体溶接や塗装までもサプライヤーに任せている。米国の自動車メーカーでも、基本的な傾向として、より大きな範囲で、部品の生産・開発をサプライヤーに任せていこうという考え方がやはり示されている。[1]
一般的に、モジュールはレイアウト上近くにある複数の部品群によって構成される部品ユニットと言い換えることが出来。代表的なモジュールには、フロントエンドモジュール(FEM)、コクピットモジュール(CPM)、ドアモジュール(DM)、ルーフモジュールなどが挙げられる。一方、モジュールのとらえ方や構成部品、生産方法などは、各自動車メーカーの考え方を反映してそれぞれ異なった内容を持っている。欧州メーカーと日本メーカーで違うのはもちろん、欧州メーカー間でも違いがみられる。
モジュール化と外注化により、本来であれば、従来のような高度な摺り合わせが減少することにより、完成車メーカーとサプライヤーの立地はより柔軟性が高まると考えられるが、実際にはサプライヤーパークに見られるように、完成車メーカーとサプライヤーの立地はより近接する方向に向かっている。これは、自動車のモジュールと呼ばれるコンポーネントは比較的大きなものが多い点と、近接立地することにより、納入リードタイムを短縮させ、生産計画上、見込生産から受注生産への移行タイミングの自由度を少しでも大きく取るためである。
アーキテクチャにおけるモジュール化
従来のモジュール戦略は主に生産および調達プロセスの合理化を図るものである。それに対し新モジュール戦略は企画・製品開発および工程開発に関わる取り組みであるといえる。新モジュール戦略では、車両の多様化や複雑化が進む中、個別車種ごとにその都度車両開発するのではなく、複数セグメントに投入する車種を一括企画した上で、あらかじめ開発した設計要素の組み合わせにより、多様な車種を少ない開発工数で創出することを意図するものである。すなわち、先行開発の段階で、車両システム全体をエンジンやシャシー、ボディなどのサブシステムに切り分けていき、それらのサブシステム間のインタフェースのあり方を事前に定義しておく。またサブシステムのバリエーションもあらかじめ開発しておき、様々な車両の設計に利用できる設計要素 (building blocks) とするのである。個別車種の開発では、これらの設計要素を引き出し組み合わせることで、多様な車種を少ない開発工数で生み出すことを目指している[2]。フォルクスワーゲングループの商用車メーカーであるスカニアは、1950年代からモジュラーアーキテクチャの研究をすすめ、モジュラーアーキテクチャを確立した唯一の自動車メーカーと言われている。2012年に子会社化したフォルクスワーゲンは、この技術を活用してMQBを開発した。
新モジュール戦略
- フォルクスワーゲン:MQB(独; Modularen Querbaukasten 英; Modular Transverse Matrix) 2012年2月発表
- 日産自動車:CMF(Common Module Family) 2012年2月発表
新プラットフォーム戦略
- マツダ自動車:コモン・アーキテクチャ構想(CA) 2006年
- トヨタ自動車:TNGA(Toyota New Global Architecture) 2012年3月発表
- スバル:SGP(SUBARU GLOBAL PLATFORM) 2016年3月発表